電車の線路を頭に思い浮かべてみて下さい。
と言われた時に、何となく頭に浮かぶ風景の線路は"茶色"か"灰色"ではないでしょうか?
それもそのはず。目に入る線路の下には、ほぼ確実に一定の大きさの砂利が敷かれているからです。
言われてみれば…という感じだと思いますが、あの砂利が何の為に敷かれているかを考えたことはありますでしょうか?どこに行っても同じような仕様になっている…それはつまり論理的な理由があるということに他なりません。
実はその理由は、我々の生活に密接に関係するものだったのです!その豆知識をこの記事ではお届けして行きます!
強力な土台作り&振動の低減
線路の下に敷かれている砂利はバラストと呼ばれる砕石で、これを利用した線路のことを「バラスト軌道」「バラスト道床」と呼んでいます。
砕石同士が深く噛み合うことで強固な下地を作り出し、毎日数多の電車が行き来しても崩れない頑強さと地盤の補強を行うことができる優れた仕組みです。
この線路の下に敷かれた砂利の活躍は、強度を補完するだけに留まりません。
実は砕石が一部の空間に密集していることが、周辺の振動の低減に繋がるという結果が存在します。石一個一個がそれぞれの揺れと干渉することで揺れを打ち消し合い、小さく素早く振動を抑えます。
これは、電車が通過した際に発生する振動を抑えてくれるメリットに繋がります。近隣の住宅などに大きな揺れを伝えないために、あの砕石は日夜効果を発揮し続けているのです。
騒音の低減効果も
砕石が敷き詰められていることで生まれる石同士の細かい隙間は、振動だけではなく騒音も低減することが分かっています。
数値にすると5dbほどと決して大きな数字ではありませんが、電車の騒音の大きさを考えると少しでも数値が落とせるに越したことはありません。
振動と騒音、2つの面からバラストは近隣への配慮をこなし続けています。
低コストで総合的にメリットの大きい軌道
このバラスト軌道ですが、砂利が干渉し合う関係で石が削れて小さくなってしまい、補充したりメンテナンスを行ったりと不便なところもあるようです。
現代技術ではより優れた線路の構築方法も存在しており、そちらを優先的に使用している例も多くなっています。しっかりとした防音壁に守られた高架状の線路や一部のトンネル、閉鎖された地下鉄の線路ではこのバラスト軌道を用いていることはほとんどありません。
しかしながら、バラスト軌道はそれらに比べてコストが非常に小さく済むという大きな利点があります。
砂利を集めてくれば施工が可能であり、その砂利も特別なものではありません。安価に必要な資源を調達することが可能なのです。対して同じ距離にしっかりとしたコンクリート打ちなどを行う費用は、砂利を敷くのと比べ物にならないほど高額です。
また、強度的にはメンテナンスも少なくより強力な施工ができても、振動や騒音の低減効果はそれらでは実現できません。そちらにも気を配る場合、さらに上乗せ工事が必要となります。
このような問題点を総合的に加味して行くと、まだまだバラスト軌道には有用性があると言えるのです。
積み重ねられた技術をしっかり利用すれば、全てをより良い形に仕上げることは可能です。しかし、一定のレベルまでは意外と原始的な方法論で何とかできることも多く、それらは得てして低コストで済ませることができる内容です。
この砂利を使った線路――バラスト軌道もその好例の一つ。
今後もまだまだ、砂利の敷かれた線路は我々の生活に身近なものとして存在し続けることでしょう。
まとめ
・線路に砂利を敷き詰める「バラスト軌道」
・砂利の干渉を利用して強固な土台を生み出す。
・砂利の作用により周辺への振動と騒音を低減。
・原始的な方法ではあるが、コスパに優れている。
・現在でも幅広く使われる有用な技術である。
身近なものであり、目にする機会も多い砂利の敷き詰められた線路。こうして論理的に紐解いて行くと、その存在意義にも納得することができますね。
知っていて何かに役立つ知識ではありませんが、こうした身近なところにも理系的な知恵や技術が使われていることを実感するキッカケにはなると思います。
手持ち無沙汰な駅のホームでの待ち時間などで、会話に困った時などに使える内容です。「へぇそうなんだ」で終わるかもしれませんが、時と場合と人をよく見極ることで有用に使えることもあるでしょう。いざという時のために覚えておいて損はありません。多分。
この知識が皆様の何かの助けになることがありましたら幸いです。