久々に頂いたご相談は転職にまつわる内容です。
合わないと感じている仕事を我慢して続けるべきか。意を決して転職活動を始めるべきか、といった内容です。以下相談全文をどうぞ。
大人になると誰もが一度はハマるであろうジレンマだと思います。社会人になってすぐは上手く行かないことばかりだと思いますが、それ故に時間が解決してくれることなのか、純粋に向いていないのかの判断が難しいですよね。
その辺りに気を遣いながら、自分の経験談を交えてご回答しようと思います。解決の糸口になりましたら嬉しいです。ではどうぞ。
前提の共有
まず結論からお話すると、
・何となく自分が周りに迷惑をかけていると感じているだけで、特段周りから邪見にされているわけではない。
→もう少し続けてみてもよい。
・実務が全く追いついておらず、周りからも実際に疎まれている(気を遣わせている)と思う。
→転職を視野に入れてもよい。
この2つを前提に話を進めます。
仕事選びは人生に直結する大事なことですから、僕の立場から「そうすべきだ」という強い言い方はしたくありません。あくまで僕の一意見なので「してもよい」というニュアンスで、選択肢を提示しようと思います。
「続けてもよい」と思う理由
いきなり自分の話からで恐縮なのですが、僕は社会人になりたての頃は知識や経験が全くなく、興味や関心すら一切持たない業界で働き始めました。そのせいで本当に何もできることがなく、極めて陰鬱とした気持ちで日々の仕事に臨んでいた記憶があります。
1年経ってもその気持ちは変わらず、とにかく周りへの劣等感と罪悪感で仕事が楽しくありませんでした。辛いことばかりでしたね。その点で、投稿者さんとは近しい境遇を経験しているのかもしれないと思います。
しかし今ではその仕事について一端の仕事人レベルでは語ることができますし、内容の良し悪しも判断できるようになっています。興味もなかった分野でしたが、好き嫌いで話ができる程度の趣向も手に入れています。
何故そうなったかと言うと、これはもう単純に長く続けたからです。
僕がその仕事について「ある程度分かってきたな」という実感を持てたのは、およそ3年目の途中くらいからだったと思います。
僕は多くの分野において、作業の基礎的な内容は1年程度で修得できると思っています。もし1年かかって作業自体が覚えられないとなると、残念ながら「向いていない」と考える方が大局的に見て正論となるでしょう。
それがクリアできると次は「その作業に何の意味があるのか」「どうしたら効率よくできるのか」を"理解する"フェイズに入ります。投稿者さんは、今ここで悩んでいるというイメージで読ませて頂きました。
そしてこれは一朝一夕でどうにかなることではなく、一定の経験値が必要です。辛いながらも続けていくことで、気付いた時には楽になっているということも少なくないはずです。
"理解"に必要な時間は約3年
僕の個人的な体感では、理解に必要な経験値の蓄積にはだいたい3年の時間を要します。3年間続けることで、その分野に「従事した」と自信を持って言えるようになると考えています。
この話を聞くと思い当たるのが、よくある古い考え「とりあえず3年続けてみろ」だと思います。今でも耳にするのではないでしょうか。根性論っぽくて嫌ですよね。
僕もこの考えは正直嫌いだったのですが、上記の経験から「3年が1つの区切りになることには(悔しながら)一定の理がある」と感じています。そして多くの人が「3年続けて楽になった」と感じているからこそ、その論説が一般化したのではないかと結論付けました。
と言うのも、僕は仕事以外にも演技とか歌とか文章とか色々なことをやっていて、全てにおいて「通り一遍は理解できた」と思えるまでにかかった時間が約3年だったのです(※文章については「これを仕事にしたい」と考えてから3年です)
それより早く切り上げたものの記憶はとても曖昧で、逆に3年続けたものは今でもスキルの一環として振るうことができています。定着には理解が必要ですから、どこかのタイミングで頭が切り替わったのだと思います。
ですから投稿者さんのように作業に不都合がなく、"理解"だけが障害となっているのなら、「続ける意味はある」のだろうなと思います。仕事が全くできないのとは違いそうなお話だと、解釈していますので。
「転職を視野に入れてもよい」と思う理由
次に僕が捉えているよりも仕事の進行に支障が出てしまっている場合及び、正直今の仕事自体がそんなに好きではない場合のお話をしようと思います。
(※僕は投稿者さんを自分より若い新卒相当の方だと思っているので、以降はそれをベースにした回答を行います。もし同年代かそれ以上で既に社会経験が豊富な方だった場合、これ以降の内容はあまり役に立たないかもしれません。ご理解の上お読み進めください)
僕は上記した仕事を3年以上続けた上で、退職という選択をしています。これは仕事のことが理解できた上で、「やっぱり嫌いだな」という思いが消えなかったからです。
辞めた理由はそれだけではなかったですが、その気持ちが当時僕の心を圧迫していたのは事実です。色々覚えた上で離れたわけですから、後悔もなければ失敗だとも思っていません。辞めてからの方が人生200億倍ハッピーになりました。
とは言え長年勤めたことによって得たノウハウは、今でも執筆や生活に流用できています。
僕は夢追い人をしていた若い時分に「自分があまりにも人間的に未熟だ」と感じることがあり、人間的成長のために社会人になることを選びました。僕にとっての勤め人期間は自分を大きくするための手段であり、その目的ありきで続けられていたと思います。
それを長く続けたことで一定まで果たせたのは間違いなく、一応僕はそこまで我慢して仕事をして良かったとは思っています。
「とりあえず3年」の重み
ただし、上記を踏まえてお伝えしておきたいことがもう1つあります。
30歳を超えてこういう活動をしているとより感じるのですが、「やっぱ若い時間って大事だったな」と。実感!痛烈!
前職で5年ほどの歳月を積み重ねたことで、僕はあっという間にアラサーになってしまいました。そして日本社会は30歳を過ぎてから新しい仕事を始めるのが大変難しく、風当たりも強い傾向があります。体力精神力的にも厳しくなってきます。
こういった事情により、大抵の人は20代までに培ったスキルや知識で30代以降の人生を歩むことになるのです。それが最も楽かつ堅実な選択になるからです。
上記のことをを加味するとどうでしょう。フレッシュな社会人期間は高卒で10年強、四大卒で7年ほどしかなく、院卒であればもっと短くなります。
その期間における「とりあえず3年」というのは、実は全然"とりあえず"ではありません。「自分の人生を決定付ける大事な時間の半分を消費する」という極めて重篤な決断となり得ます。
ですから、投稿者さんが今の仕事について「全然楽しくないし向いてるとも思えない」と感じているのなら、(作業の出来不出来に関わらず)サッサと転職してしまうのもアリだなと思うのです。
「今の仕事を続ける意義はありそう」と、内容に納得して継続を決めるなら何の問題もありません。ですがもし「逃げのような気が…」などの理由だけで固執するとしたら、後から失った時間を悔いるリスクは残ってしまいます。
そういった時間的なことを優先するのなら、未来の自分に賭けてみるのも一興です。もちろん、行動することは一種のギャンブル。それによって良い方向に転ぶとは限りません。様々な事情を鑑みて、総合的に見てどうすべきかをしっかり考えてみてください。
おわりに
経験談ありきの回答になってしまいましたが、できる限り細かく選択肢につて思考できるように書いてみました。少しでも参考になりましたら幸いです。
最後に「はつさんはどうしますか?」と書かれていることを踏まえ、もう1つ自分語り強めの説話を加えておこうかと思います。
今の仕事が「別に好きではないが、嫌いでもない」なら、"できる"ようになった時に好きになる可能性はあります。逆に「嫌だなぁ嫌いだなぁ」と思いながら続けていることは3年経っても嫌かもしれません。僕は上記した通り、そのタイプでした。
でも3年経てば仕事自体はこなせるようになりますから、「嫌いでも"できる"からこの仕事を続けていく」選択ができるようになります。そのまま+5年続けたら、恐らくそれ以外の仕事を改めて修得し直すのは難しくなるでしょう。そこまで行くと自ずと諦めもつくかもしれません。
僕はそうなることを恐れて、20代後半ギリギリで退職をして新しいことを始めました。しかし一般社会人として考えるなら、そのままその仕事を続けていた方が"普通"かつまともな人生だったと思います。
ただ僕はそうなりたくなかっただけのことであり、そうなりたいと思って我慢することも1つの正解です。「好き・嫌い」を乗り越えて「できる・できない」を優先している人の方が社会には多いはずです。
僕のような30過ぎとは、既に素晴らしい社会的地位を得ている人がたくさんいる年齢です。僕はと言うと、Twitterで少し目立ったことがあるだけの吹けば飛ぶようなライター/ブロガーです。この歳でチャレンジャーと言うのは明らかに遅すぎていて、「これで俺が25歳だったら何の問題もないんだが」と思うことが少なくありません。
でも僕はその年齢の時は我慢して嫌な仕事をしていましたし、それを経たからこそ"今"があります。早く行動すれば良かったと思うのは正直なところですが、早く行動したからと言って"今"以上があるともとても思えないのも事実です。
そこを"たられば"で後悔しても仕方がないですし、僕は「まぁ自分はその程度の人間だったわけだから、マイペースにやって行くしかないな」と開き直って今できることに一生懸命トライしています。
投稿者さんも一度きりの人生ですから、若い時間で悔いのない選択ができるように考えてみてください。どんな年齢の方でも「今が一番若い」わけです。その時間を大切に使って行きましょう。それではまた。