ひき肉たっぷりのメンチカツ!
晩ご飯のおかずにも子供のおやつにも大活躍の人気料理です。
しかしこのメンチカツ、何故「メンチカツ」と呼ばれるようになったかご存知ですか?
使われている材料はひき肉(ミンチ)なのだから、「ミンチカツ」なのでは…という真っ当なな疑問?と言うか今まで普通に「ミンチカツ」だと思ってた…という人がいてもおかしくありません。
実はこの「メンチカツ」という言葉の裏には、馬鹿馬鹿しくも言葉の歴史を感じる、興味深い事情が眠っていたのです!
この名前の由来について、この記事ではまとめます!
「メンチカツ」という名称は"聞き間違い"からついた
今となってこそミンチが使われているのに「メンチカツ」?というのが筋が通った疑問として扱われますが、実はひき肉をそう呼ぶようになる前から「メンチカツ」という料理はあったのです。
メンチカツの発祥は明治時代中期。
『煉瓦亭』というお店が生み出し、世に広まったものでした。
参考:http://ginzarengatei.com/
このお店の初代店主が西洋人向けの料理としてひき肉を使ったカツレツを開発した際に、料理名に悩んでしまう事件が起こりました。西洋人に向けて作った料理でしたが、当時はまだ外国語文化が根付いていない時代だったこともあり、名称を自分で考えることができなかったのです。
この際、店主はお店にお客と来ている西洋人から言葉を学んで採用するという方法を取ることに決めたそうです。
ひき肉は英語で「Minced meat」(ミンストミート)ですが、当時の店主はこの「ミンス」という響きを「メンチ」と認識したようです。耳慣れない言葉だったのか、発音に癖があったのかは分かりませんが、なかなかヘビーな聞き間違いです(笑)しかしこの聞き間違いが、そのまま名称として利用されるようになったということです。
以上のことから、ひき肉を使ったカツレツを「メンチカツ」と呼ぶようになったのです。
中間のミートは耳馴染みの良さを優先して省かれたとのこと。
聞き間違いというお茶目な理由ではありますが、それがそのまま定着してしまったということはそれだけ人気が爆発したメニューだったということなのでしょうね。味もコスパも良かったのは、きっと当時から変わっていないのでしょう。
関西では「ミンチカツ」と呼ばれている
しかし「ミンチカツ」という呼び方は間違いではなく、実際に存在しています。
「メンチカツ」は関西に広まった際に「ミンチカツ」と呼ばれるようになりました。ですので、関西出身の方にはこちらの呼び方の方が馴染み深いという方も少なくないようです。
この呼称の変化は単に関東と関西の言葉の訛りの違いというわけではなく、その材料の違いにありました。
当時広まっていた「メンチカツ」は牛と豚の合いびき肉を利用して作る料理でした。しかし関西では牛食文化が根強く、牛肉=肉という認識が強かったそう。そのため「メンチカツ」も牛肉100%のひき肉を利用したアレンジをかけることになりました。
関西ではそれぞれのカツが別の料理であることを示すそうと、牛100%カツの名称を変える試みがなされました。その際に本来の英語の発音に近い「ミンチ」という呼び方を採用し、「ミンチカツ」と呼ぶようになったのだとか。
今見ると本当にややこしい事情ですが、当時は当時で料理人の意地や味の違い物を扱うことへの抵抗感があったのかもしれませんね。
ひき肉が「ミンチ」になったのは辞書に採用されたから
ではひき肉は何故「ミンチ」と呼ばれるようになったのでしょうか?
まず初めに「メンチカツ」が世に広まっていたことにより、その材料であるひき肉のことを「メンチ」と呼ぶ慣習が生まれました。カツの名前→ひき肉の呼び方だったとは…最初に我々が考えていたのとは完全に真逆の流れだったのですね…。
そして前述した通り、関西で「ミンチカツ」が誕生します。この時初めて「ミンチ」という言葉が世間で使われるようになったわけですね。
当然のことながら、料理名ではなく材料の名詞であるひき肉の名称は「メンチ」か「ミンチ」で統一したいという動きは出てきます。広まった経緯を考えれば「メンチ」に統一するのが普通に思えますが、定着したのは「ミンチ」の方でした。
これは当時の流行語や外来語をまとめた辞書「モダン辞典」のひき肉の呼び方に「ミンチ」の方が採用されたからです。元の英単語の発音に近い方が採用されたという見方が有力です。
この辞書に載っていた言葉は公用語として広く使われる傾向があったため、新聞などに「ミンチ」と記載されることが一般的になり、それがやがて当たり前となって定着したのです。
しかしながら「メンチカツ」という料理名は既に全国各地に定着し切っていたため、現代に至っても「メンチカツ」という原初の呼び方が失われることがなく、料理名の1つとして残り続けているのだそうです。
まとめ
「メンチカツ」という料理名は「ミンチ」より前からある。
「メンチ」という言葉は、英語の「ミンス」の聞き間違い。
関西では素材の違いを明確化し「ミンチカツ」と呼ばれた。
ひき肉は「メンチカツ」の素材ということで「メンチ」と呼ばれた。
「ミンチ」と呼ばれるようになったのは、辞書にそちらが採用されたから。
という内容でした。
「メンチカツ」という言葉の意味を紐解くだけで、ここまで深い歴史的背景を感じ取れるとは驚きですね。最初はただの聞き間違いだったとしても、それが発展に発展を続けて今の形に至っていると考えるとなかなかロマンのある話です。むしろ聞き間違いがなければここまで複雑化することはなかったわけですから。
身近にある言葉にも込み入った事情が眠っているというのが分かる面白いお話でした。今後は「メンチ」と「ミンチ」の書き方の違いを見つけるだけでも「おっ」と思えてしまいそうです。小さい楽しみが1つ増えました。
この記事が皆様の疑問を解決する内容でしたら幸いです。