皆大好きイタリアンとフレンチ!
現代では我々の生活にとても身近なものとなりました。
イタリアンはパスタやピッツァなど安価で簡単に楽しめる料理が多く、お家での日々の献立にも利用されるかと思います。
対してフレンチは日本では高級なイメージが強く、食べるのは特別な日にレストランで…などが多いでしょうか。
どちらもヨーロッパから伝来した料理で、何となく見た目も似ているフレンチとイタリアン。厳密には「今食べた料理のどっちがどっちか分からない」ことも多いと思います。
それもそのはず!
実はこの2つ、元々は同じものだったのです!
なんとフレンチが生まれたのはイタリアンがあったから!そしてその裏には、驚くべき歴史的背景がありました!
この記事ではその内容を詳しく解説します!
紀元前から美食の国だったイタリア
フレンチ誕生のルーツは16世紀頃まで遡ります。
当時ヨーロッパで最も優秀な食文化を有していた国はイタリアでした。これは紀元前より栄え大きく領土を拡大していたローマ帝国が、幅広く知識を収集した影響であると言われています。
ローマ帝国の権力者は腕の良い料理人を雇うことが1つのステータスであったとされています。それが雇われる料理人同士の研鑽を生み、技術が洗練されたそうです。
それは現代でもなお食の国として名を馳せるイタリアにまで脈々と繋がってきた歴史です。
そして16世紀頃のフランス料理はと言うと、逆にお世辞にも美味しいとは言えない料理だったとか。
この頃の1つの出来事によって、イタリアンの技術がフランス料理に持ち込まれることになりました。
王族の結婚 技術の伝来
16世紀頃のルネサンス期、イタリアのフィレンツェを中心に栄えたメディチ家という大きな一族がありました。世界史の勉強をしたことがある方は、どこかで耳にした覚えのある名前ではないでしょうか。
銀行家や政治家を輩出し、その溢れんばかりの財力によってフィレンツェの実質的な支配者として君臨していたメディチ家。一説では薬や医学という意味を持つ英語であるmedicineの語源になった(※現在では主流な説ではない)とも言われている大貴族です。
このメディチ家の令嬢であったカトリーヌ=ド=メディシスが、フランス国王アンリ2世に嫁いだのです。
しかしメディチ家の人間としてイタリアの優れた料理に慣れ親しんでいたカトリーヌには、当時のフランス料理は全く口に合わなかったよう。
このことからカトリーヌはイタリアにいたお抱えの料理人を宮廷に招き入れ、その技術はフランスの料理人達に伝来されました。これ以降、フランスの宮廷料理のクオリティはイタリアンを基準に大きく向上したと言われています。
ですが、その料理が市民にまで降りて行くのにはまだまだ時間がかかります。
具体的には200年後、18世紀にフレンチ文化の定着は訪れるのです。
失職した宮廷料理人の独立
18世紀のヨーロッパは、市民革命が勃発する動乱の時代でした。
フランスにも、かの有名なフランス革命があります。ルイ16世とマリー・アントワネットが処刑されて王政が崩壊。これにより、王族に仕えていた多くの人達は路頭に迷う結果に。
宮廷料理人達もその例外ではありません。
彼らもまた一斉に職を失ってしまったのです。
しかし、彼らにはそれまでに培ってきた確固たる技術があります。そしてフランス市民にとって、宮廷料理の味はまだ未知の領域だったと言って間違いありません。
ですから、料理人達はその環境と技術を活かして次々と個人経営のレストランを開業。200年の歳月を重ねてイタリアンから独自進化を遂げていた宮廷料理を、市民も安価で食べることができるようになりました。
この時期に広まったものが、現代に繋がるフレンチの最も強いルーツであると言われています。
フレンチはその後も庶民の口に合わせて独自に進化を続け、今ではイタリアンを超えて世界最高の料理であるという専門家も少なくないほどにまで成長を遂げました。
伝統文化が途絶えたイギリス
ちなみに、同じヨーロッパの中でも取り分け「まずい」と称されるものにイギリス料理がありますが、このイギリス料理がまずいと言われるようになった所以の1つに「伝統文化が伝わることなく断絶したから」というものが挙げられるそうです。
現代日本でも「このままでは後継ぎがおらず、技術が失われてしまう」と言われるものは多くありますが、実際に歴史の闇に葬られたという理由で失われたものもあれば、大事に護り続けてきたことで発展したものもあるということ。
料理を楽しむ前に歴史の背景を知ることで、そのありがたさと重要性をスパイスにする、新たな楽しみを見出すこともできそうですね。
フレンチとイタリアンの違い
フレンチとイタリアンの密接な関係を理解したところで、現在のイタリアンとフレンチの違いに目を向けて行きましょう。意外とよく分かっていないところが沢山あるかも?
主食の違い
フレンチとイタリアンでは、料理に添えられる炭水化物の種類に違いがあります。
フレンチではパン類が基本。
一方のイタリアンはお馴染のパスタ。稀にフォカッチャを添えられることが多いようです。
言われてみればフランスパンは日本でも広く親しまれていますが、イタリアパンという名称は一般的ではないですよね。まずここを1つ大きな違いと捉えておくと良いでしょう。
オリーブオイルとバター
2つの料理では、用いられる脂分の種類にも差があります。
フレンチはバター。
イタリアンはオリーブオイルです。
日本でも家庭に常備してあるであろう2種類の調味料。イタリアンとフレンチの大きな違いに繋がっていたのです。
この違いによりフレンチはこくのある滑らかな味わいの料理が多く、一方のイタリアンでは素材の風味を活かした爽やかな風味の料理が多くあります。
ちなみに、今となってはフレンチの方がソースなどを工夫して深みを出すことに注力しており、イタリアンの方が素材の味を活かす味付けにこだわるイメージがありますが、フランス料理にソースという概念を持ち込んだのもカトリーヌだったそうですよ。面白いですね。
手を使って良いか
どちらもナイフとフォークを駆使して食べる印象が強いイタリアンとフレンチ。
しかし料理の中には、ナイフとフォークではどうしても食べにくいものがあるはず。日本人としては「お箸が欲しい!」と思ってしまいがちです。
それらの料理を食べる時、片方は手を使って良いマナーになっているのです。
それはイタリアンの方。
イタリアンでは食べ辛い料理は手づかみで食べても良いことになっています。
フレンチは手を使って料理を食べるのはタブーとされており、ナイフとフォークを上手に使って最後まで食事を終えなければなりません。
またイタリアンも手を使って良いのは、あくまでも"どうしても食べ辛いもの"に限られます。
例えば本場ではピッツァもナイフで切り分け、フォークで丸めて手を使わずに食べるのがマナーです。日本のように手づかみで食べてはいけませんのでご注意を。
食後の食器の置き方
フレンチとイタリアンとでは、食後のナイフとフォークの置き方にも少し違いがあります。
フレンチではお皿の中央より右に縦向き。
イタリアンではお皿の半分より下に横向き。
縦と横で明確に分けられているのです。
フレンチは斜め向きに置く作法も許されているようですが、そちらは厳密に言うとイギリスの文化ではないかという声もあるとのこと。
食事中と食後のナイフフォークの置き方だけでも混同しそうになるのに、料理の種類によって食後の処理の仕方も違うとなるとかなりややこしい…。
元々は同じものだったはずなのに、どこかで置き方に違いが生まれてしまったということなのでしょう。マナーとは時の流れによって大きく変わるということを思い知らされます。
日本ではそう大きく問題にならない点ではありますが、2つの違いを感じる点としては面白い部分と言えそうです。
おわりに
フレンチのルーツがイタリアンにあること、そして現代のフレンチとイタリアンの違いについてまとめて参りました。
16世紀にイタリアの技術がフランスに伝来。
きっかけとなったのはフランス王族の結婚。
18世紀の市民革命で宮廷料理人の多くが失職。
多くの個人経営レストランが誕生し、現在のフレンチへのルーツが生まれた。
文化の背景に歴史あり。
複雑な経緯を経てフレンチは誕生し、今や世界を代表する美食文化として親しまれるようになりました。
国柄や国民性によって尊重されるものが変われば、発展する形も似て非なるものになる。最終的には、全く違う文化として定着するということですね。
日本人としては「洋風のもの」というのを何となく一緒くたにして考えてしまいがち。こうして正しい知見を経て、美味しい料理をもっと深く楽しめるようになったら素敵ですね。
この記事が皆様の知見を広める一助となりましたら幸いです。