生活の知恵

立体音響『ドルビーアトモス』とは 押さえておきたい3つのポイント

投稿日:2018年10月6日 更新日:

 

今、映画館で話題を呼んでいる『ドルビーアトモス』上映。日本でも少しずつ採用している映画館が増え、名前の認知度も上がってきたことと思います。

しかし映画館の上映形式ってたくさんあってどれがどれだか…。特にこの『ドルビーアトモス』ってやつは名前も難しくてさっぱり…。

そういう方も多いと思います。

ですが、この『ドルビーアトモス』は、こと音響という観点では他の追随を許さないほどの迫力を表現できる物凄い技術なのです。耳から得られる情報は、まるで「その場」にいるかのような圧倒的なリアリティを実現しています。

今回の記事ではこの『ドルビーアトモス』の秘密を分かりやすく解説。難しい技術ですが、素人の理解に必要なところだけを抜粋してお届けします。

天井にもスピーカーを配置することで「完全立体音響」を実現

『ドルビーアトモス』上映の最大のポイントは、天井にもスピーカーが設置されていることです。実際に足を運んでみると、青く輝くスピーカーが天井に吊り下げられているのを目にすることができます。
これの効果により、完全に立体的となった音を楽しむことができるのです。

今では一般的なものとなっている『サラウンド』の音響設備は、前後左右にスピーカーを取り付けることで、音の奥行を感じることができるシステムです。

しかし『サラウンド』では音が隣りで鳴っている、後ろか鳴っているということまでは分かっても、例えば飛んでいる鳥がどの高さを飛んでいるかは分かりません。

どこで鳴っているか分からない物音、映画の本筋とは関係ない人の話し声などが、どの位置関係で鳴っているかも正確には捉えることができないはずです。

『ドルビーアトモス』はその正確な位置すらも判別できます。自分の座っている位置を中心とし、全ての音の響きを正確に捉えることができるのです。

『サラウンド』を遥かに超える数のスピーカーを用いた完全なる立体環境は、他にはない映像体験を我々にもたらします。

『サラウンド』が「円」で音を捉えているとしたら、『ドルビーアトモス』は「球」で音を捉えているというイメージ。

「平面」と「立体」の確たる違いがそこにはあります。

1つ1つのスピーカーから「違う音」を出すことができる

『サラウンド』による音響表現では、実は全てのスピーカーから「同じ音」が出力されています。

スピーカーの配置を考慮して最も美しくなるように音声データを作成し「1つの音声」を上映するというのが一般的です。この方法だとメインの音を際立てるために、どうしても他の音声を犠牲にしなくてはならない部分ができてしまいます。

対して『ドルビーアトモス』はスピーカー毎にそれぞれ異なった音を出力することが可能です。これにより「1つのスピーカーからしか流れない音」というものを作成し、劇中の「その1点でだけ聞こえる音」を表現することが可能です。

「多くの音声」を劇場内で合成することで、リアリティの高い音響表現を実現します。これが音の位置をより正確に感じ取ることができるもう1つの大きな理由です。

その分、通常の音声編集とは全く異なった技術が必要となるようですが…。日本ではまだまだ搭載している映画館も少なく(全国で25館程度)上映期間も短めにせざるを得ない現状があり、製作側にも予算や時間に余裕がないと実装が難しいというのが課題のようです。

音楽のライブ映像を最高の音質で再現可能

ダイナミックなアクション大作などに用いられることが多い『ドルビーアトモス』上映ですが、実は音楽のライブ映像の親和性が非常に高いことも特筆すべき点です。

日本国内では、TVアニメ『進撃の巨人』のOPテーマ「紅蓮の弓矢」で話題を呼び、紅白にも出場したアーティストLinked Horizonによる【劇場版 Linked Horizon Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演】が、国内初の音楽ライブをフィーチャーした『ドルビーアトモス』作品として公開されました。

音楽のライブ映像の『ドルビーアトモス』は、フィクションである映画作品の上映とはまた一線を画する素晴らしさがあります。

最も優れた立体音響技術を駆使することで、映画館にライブ会場当日を再現することができるのです。

ライブというのは当日の臨場感や迫力を生で楽しむ文化です。しかしながら音楽という観点で話をすると、人の入り方や会場の環境、その日の音響調整などにより、必ずしも理想的な音を聴くことができないという現実があります。それも含めてライブの醍醐味とも言えるのですが…。

『ドルビーアトモス』では、それらの問題を完璧にクリアし「映画館用に完璧に調整された音楽ライブ」を楽しむことができます。

音の迫力や臨場感は当日のレベルを保ったまま、間近で体現される演奏者のダイナミックなプレイに酔いしれることができる、圧倒的な体験です。そもそもライブ会場では天井から音が降り注ぐことはないので、その1点で言えば現実を超えた音楽体験とも言えるのです。

まだまだ音楽のライブを映画館で流すという文化は一般的ではないものですが、今後「ライブよりも聴き取りやすいライブ」として、映画館での『ドルビーアトモス』上映が音楽関係者にも広まることを望みます。

まとめ

『ドルビーアトモス』とは天井に取り付けられたスピーカーと個別に出力される独立した音を合成することで体現される、今までにない全く新しい音響技術です。2012年に登場した新しい技術であり、日本国内でも徐々に新しい体験として広まりつつあると思います。

今回は映画館での上映について書かせて頂きました。『ドルビーアトモス』自体は映画館だけでなく、家庭用スピーカーに適合していたりモバイル機器でも対応しているものがあります。そちらについても遥かにクリアな音質が実現可能と話題を呼んでおり、スマホの選択肢として音質がキーになってくることも今後は増えそうですね。

音にこだわり抜いた映像体験は、4DXやIMAXシアターとはまた全く違った没入感を醸します。

お近くに『ドルビーアトモス』上映が行われている映画館がありましたら、是非とも足を運んで体験してみてください。今までにない感覚に出会えること必至ですので。

この記事を読んだ1人でも多くの方が、その魅力の虜になることを祈っております。

Copyright© HatsuLog , 2024 All Rights Reserved.