現在、2019年に「青い服が値上げされるかも」というのがにわかに話題です。
何でも全体的な染料の価格高騰により、特に青色が手に入らなくなってしまうんだとか。
どうしてこのようなことが起こるのでしょうか?
その理由は、染料の歪んだ生産事情にありました。
この記事では価格高騰の理由についてまとめます。
中国の環境汚染対策が原因
実は世界で使われている染料の70%程は中国で作られたものが使用されています。日本だけでなく、世界中が中国の染料を利用している状況です。1980年代は欧米が8割以上のシェアを占めていたものの、メーカーの再編や加工拠点の移設に伴い、2016年には中国で7割が作られるようになったとのこと。安く生産できるから、中国に出向してまとめてしまったのですね。
この中国にほぼ一本化しているというのが大きな引っかかりになっています。多くの物を生産するのには工場が必要。そして工場の稼働には排気ガスや廃棄物という汚染要因が必ずセットでついてきます。
中国は数年前からこういった工場を根城とした環境汚染が大きな問題となっているのは周知の事実。2014年頃からは特に活発にこの環境汚染の改善に取り組んで行くこととなりました。
この対策には、一定の基準に達していない企業の工場などに状態改善を義務化する内容も含まれており、これに対応することができなかった工場が稼働停止や廃業に追い込まれる事態に発展しています。これが染料全体が値上がりする結果を生んでしまい、中でも青色はこの4年間で2倍以上の価格高騰を見せるなど、上がり幅が顕著なのです。
中国国内の染料の生産事情は浙江省が75%、江蘇省が15%、その他が10%とかなり極端な割り振りになっています。この中には特に環境汚染が酷い地域も存在し、2018年には染料メーカーの違反により工場の大規模な稼働停止措置が取られるなど、厳しい報告が後を断ちません。
環境汚染対策は必要なことではありますが、世界シェア7割を超える中国の染料が生産率が著しく下降してしまっている現状は、世界的に見てかなり危機的なものであると言われています。
日本の青色染料の在庫が切れる
染料の価格高騰があっても、日本という国は「できる限り消費価格の値上げを行わないように努力する」文化が根付いてしまっている国です。服についても染料の価格が高騰したからと言って、軽率な値上げが許されない風潮があります。
染料の価格高騰についても各社が身銭を切り、できる限り値上げをしないよう我慢比べをしてきてくれていたようですが、それにも限界が訪れます。上記した工場の大規模稼働停止の中に、日本が懇意にしていた青色染料メーカーが存在していたからです。
このように業界全体が声明を出さざるを得ないような事態に発展しています。
こういった事情により、早ければ今年の5月にも青色染料のストックが枯渇してしまう恐れが出てきてしまったとのこと。さらに高騰した青色染料を購入しない限りは服を作ることができなくなってしまうため、各社がその対応に追われるのではないかと言われています。
結果的に「全国で青色染料を利用した服飾の価格が高騰する」という現象が起きてしまうことが懸念されているのです。
日本で業界全体がこのような訴えを出し理解を求めるのは異例のことであり、我々の生活に確かな事実となって襲いかかってくる可能性が高いのです。今後ともこの染料の高騰事情については、チェックした上で服の購入を検討されると良いかもしれません。
まとめ
染料の世界シェアの7割は中国。
中国の環境汚染対策により染料の工場が停止。
世界的な染料の価格上昇や枯渇が懸念される。
日本が懇意にする青色染料のメーカーが停止措置。
それに伴い青色染料の大幅な値上げの恐れあり。
といった内容でした。
「環境汚染対策を行って操業するくらいなら、工場をそのまま閉じてしまった方がマシ」という考えが珍しくない状態にあるのが今の中国という国のようです。何ともいい加減な話でありますが、そのいい加減さがあってこそ実現している安さというのもきっとあると思います。
中国の杜撰な対応を糾弾するのであれば、その煽りを誰かが被らなければなりません。中国がよりしっかりした国に変わって行く過程で「安さを維持できない」ということは今後も出続けるに違いがありませんから。
この染料問題はその氷山の一角に過ぎないのではないでしょうか。今後とも我々はこの中国という国の甘い体制に生産を依存している分野において、似たようなトラブルを経験することは増えて行くことでしょう。
身の回りの青いものが値上げするというだけでも大変なことですが、問題はきっともっと根本的なところに潜んでいるものです。
服飾といった文化は誰もに関係がありますし、その変化も実感しやすいものです。そういったところから、より深い社会の現状について考えるというのも大事なことだと思います。
この問題が、より大きな社会問題について考える1つのきっかけになったら面白いかもしれませんね。お読み頂きありがとうございました。