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夢を諦めた時、過去の努力は何の役にも立たないのか?【相談回答】

投稿日:2020年9月10日 更新日:

今回の相談は夢を諦めようとしている方から。

メッセージが非常に長いので、要点を先にまとめておきます。

要約

・学生の期間をほぼ全て音楽に打ち込んだ。
・コロナでのエンタメの風当たりに心が折れた。
・1から就活して一般職に就こうとしている。
・音楽の知識は今では何の役にも立っていない。
・必死に打ち込んできたことなのに絶望している。

といった内容。
投稿者さんの悲哀が伝わる全文は以下の通りです。より明確に気持ちを理解したい方は読んであげてください。

夢追い人の多くは挫折を経験して、道半ばで違う人生を歩むことになります。そういう意味では「よくある話」ですが、その深部は個人の事情によって様々です。

特に今年はコロナ禍によって否応なく振り回された人たちも少なくないため、ダメージの受け方は普段とはまた異なります。多くの人に否定された気持ちになることは辛いですからね。

その辺りを加味して、今回も寄り添って行こうと思います。

夢を諦めた時に思うこと

「自分がやってきたことは一般社会では本当に何一つ役に立たない」

身につまされますね。僕も演劇から離れて就職する時、ほぼ同じことを思ったことがあります。

僕の場合、正確に言うと「自分のやりたいことが一般的な職業として認められるものであったら良かった」でした。その時ばかりは、人生に少し躓いた感覚を持っていたのを覚えています。

普通の職業であれば研修期間でも給料が貰えますし、社会人として認められます。しかし夢追い人の多くは(物凄い才能やコネがある場合を除き)成功するまでお金を得ることができないジレンマの中で戦います。しかもその間はどれだけ努力しても「遊んでいる」と認識されがちです。

一般職を目指し出してこの差を意識すると、就きたい会社やなりたい職業がある人が逆に輝いて見えたりするでしょう。同時に「自分も同じようなモチベを持っていたはずなのに、どうしてこうなれなかったのか」という自己嫌悪も出てくるかもしれません。

しかも就職活動という場だと「音楽を本気で頑張っていた」などのステータスは、「部活動を一生懸命頑張っていた」などとほぼ同質のものと扱われがちです。そういった努力を評価されないタイミングが多いことも、また難しい点です。

結果として「自分がしてきたことって一体何だったんだろう」と思わされます。夢半ばで敗れた人の多くは他にやりたいことがあっただけに、社会での生き辛さを感じることが多くなるような気がします。

ではその状況から自分をどのように動かして行けば良いのか。それを以下でお話しようと思います。

物事の積み重ねは根付いている

まず第一に、「音楽活動で培ってきたものはスキルだけではない」ということをお伝えしようと思います。

例えばですが、人間関係に着目してみましょう。音楽のほとんどは、独りだけでできることではありません。多くの人と出会い関係を持ち、切磋琢磨してきたことと思います。

その過程で得られた関係性を構築するノウハウは、今後の人生でずっと役に立ちます。そんなの誰でも同じ…と思われるかもしれませんが、プロを目指して真剣に何かに臨んできた人しか見えない領域は確実に存在します。

多くの学生は何となく学生生活を楽しみ、何となくバイトをして、何となく就活をしています。それが悪いわけではありません。ただ、その何となくの過程で得られるものと、幼少期から人生を懸けて何かに取り組んでいる人とでは、絶対に見えている世界が違います。

今はその差を認識するのは難しいと思います。ですが社会に出て仕事に従事し、業務内容に慣れてきた頃合いには、過去の経験が役に立っているなと実感できるタイミングが絶対に出てきます。

人は自分が培ってきたものの範囲でしか輝くことができません。今の投稿者さんが持っている魅力が音楽活動によって形成されたものだとしたら、就活で縁がある会社はそれを評価してくれたということになります。

自分の持っている要素の客観視は難しいことです。特に投稿者さんは今、音楽のスキル中心に着目して絶望感を覚えている分、他の自分の良いところに目が向きにくいでしょう。

しかし、意外と周りは自分の見えていないところから魅力を探し出してくれるもの。まだ院卒として就活が行える時期にその機会を得られたことは、今後の人生の光明の1つだと思います。

何かに真剣に取り組んでいた人にはその人にしかない強さがあり、それを認めてくれる人も必ず現れます。今はそれを信じてみても良いのではないでしょうか?

社会では1つのものに打ち込んできた人は少ない

もう1つ関連してお話したいのは、音楽のスキルや知識が役に立つタイミングも今後必ず出てくるということです。

これはいつどこでとは言えませんが、特殊なスキルや知識が必要とされる場面や間接的にそれが役に立つ出来事は、長い人生で少なからず存在します。僕は最初に芝居から離れてまだ10年も経っていませんが、この間にもそう思える機会はありました。

社会人になると活動の場は狭くなりがちですが、狭いなりに多岐に渡ることが多いです。やる気さえあれば自分で自分のスキルを活かせる場を作ることもでき、それは転じてその場における「自分にしかできないこと」に発展します。

「プロを目指していた自分がそんな小さな場でイキるなんてダサい…」と思われるかもしれません。相応のプライドも技術もありますからね。僕も今でさえそう思うことがあります。

でも「社会の役に立つ」というフィールドで見るなら、それは十分すぎるほど役に立ちます。そしてそこに1つの割り切りを持つことで、自分の持っているスキルを誇れるようにもなると思います。

加えて「幼少期から」「本気でプロを目指して」「音楽活動をしている」人なんて、一般社会から見ればかなりの超激レアです。音楽界隈の中にいると気付けないと思いますが、ひとたび外に出てみると自分の積み重ねてきたものの大きさを実感できるでしょう。

僕も界隈を離れてから「プロの役者を目指して養成所に通っていた」と話すと「そんな人に初めて出会った」とよく言われました。社会全体で見れば、「若い頃からプロを目指して一生懸命何かに打ち込んでいた」ということ自体がレアケースになり得ます。

それだけのキャリアがあれば、趣味で続けていることが高じて仕事に繋がったりもするかもしれません。音楽を仕事にする夢を諦めるにはまだ早すぎます。社会人になっても可能な範囲で全力で続けていれば、何かが芽吹く可能性は残り続けると僕は思います。

絶望を味わうことで拡がる視野があります。見えていない世界が見えることで、新たにできる表現があります。そういうものを踏まえてこそ輝ける才能も確実にあります。

その自分の良さを改めて認識できるその日まで、「何となく」で良いので続けてみてください。他の人たちが何となく生きていた時間の分、あなたにもそうする権利がありますからね。

エンタメを否定しているのは、「元から興味がない人」である

最後に「コロナ禍が原因で心が折れてしまった」とあるので、その部分における僕の考えを記しておこうと思います。よろしければ参考にしてみてください。

コロナ禍以降、エンタメの存在意義が問われる場面が増えたのは事実です。エンタメへの風当たりは強くなり、不要論などの心ない意見を見る機会も少なくありませんでした。

この点について意識しておきたいのは「コロナ禍で窮地に立たされたのは劇場型のエンタメだけ」で、むしろエンタメ自体は必要とされていたということです。

緊急事態宣言発令中も、家でテレビや映画、YouTubeなどを見たのではないでしょうか?音楽を聴いたりゲームをしたり、漫画を読んだりももちろんしたでしょう。

我々が家にいる間、エンタメが完全に無くなっていたら恐らく大勢の人が発狂しました。堪らずに外に遊びに出掛ける人も増えたはずです。あの時に家で楽しめるエンタメは、確実に普段よりも必要とされていました。

今回の件ではエンタメが否定されたのではなく、「人の往来が必要な業種や文化全般が等しく抑圧された」が正しい見解です。中にはそれを「娯楽」というくくりで表現する人はいましたが、それこそが誤った見識です。

恐らくライブや演劇に馴染みがない人が、自分にとって不要なものを槍玉に挙げて主張しただけでしょう。声がデカいだけで絶対数は多くないと思います。

僕の身近なところでも病院や工場が倒産した話は耳に入ってきましたし、人が必要な業種は全てダメージを受けていたように感じます。その業種に必要とされている製造業も仕事が無くなり、やはり窮地に立たされました。

ダメージの大小はあれど、影響を受けていない人々はいません。だからコロナ禍で「エンタメが過度に蔑ろにされた」という認識は正確ではないと思っています。

別のパターンだと、ネットを使うことに問題がある世界的事件が起こったら、ネットを使う仕事の人が揃って甚大な被害を受けます。代わりにアナログなコンテンツがより求められるようになるでしょう。巻き起こった事件の質によっても、何が駄目になるかは変わるのです。

そしてこのコロナ禍が収束した時、真っ先に求められるのは劇場型のエンタメです。最初に我慢させられた分、その反動を一心に受けるでしょう。今は皆、そういったイベントに飢えているのは間違いありません。

だから自分たちのやっていることが否定されたと思わないでほしいです。否定しているのは本当にごく一部の「最初からそれを必要としない人たち」だけで、その人たちはコロナ禍と関係なくエンタメを冷めた目で見ています。

大多数の人は今も変わらずエンターテインメントを求めています。再開を望んでいます。そのために努力している人たちを応援しています。だから投稿者さんにも、積み重ねてきたことの意義に自信を持ってほしいと思います。

色々なことが重なり精神的に大変だとは思いますが、きっとやってきたことは人生の無駄にはなりません。苦しみながらも今できることを1つずつこなし、今の自分が納得できる道を進んでみてください。

その先でまた晴れやかな気持ちで音楽活動ができることを祈っています。

おわりに

夢破れた時、一旦離れようと考えた時、誰しもが相当厳しい精神状態だろうと思います。

自分が一生懸命に時間や金を費やしてきたものが中途半端で終わる、想像以上に役に立たないとなると、その時間で別のことを頑張っておけばもっと良い人生だったんじゃないかと絶対に思ってしまいます。

でもその過去の努力ありきで自分の色々なものが形成されているのは間違いなく、その全てが自分とルーツです。気付いていないだけで、必ず自分の根幹にその努力の結果が根付いています。

僕も人前に立とうした経験が無ければ、今まで皆さんに読んでもらっているような記事は書けていないでしょうから。直接的に何が役に立ったかなんて分かりませんが、その経験が欠けていたらもっと人のためにならない人間だった気がします。

それに本当に好きなことってなかなか手離せないものですし、今はそう思っていても2年後は分かりませんよ。簡単に捨てられたら苦労しません。僕はそういう人にもたくさん出会ってきました。何より僕自身が、そういう手離せない人間の1人だと思います。

人生は長いですし、投稿者さんはまだまだ20代でさえ半分もあるでしょう。意地汚く夢に縋りついていても良い年齢だと思います。是非とも続けてほしいです。

この記事が何か前向きなものを届けられていたら嬉しいです。頑張ってください。それでは。

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