皆さんはピアノの鍵盤の数って幾つだか知っていますか?
現在では種類に関わらず、全てのピアノが「88」を上限に作られているとのこと。
一部の電子ピアノでは鍵盤が少ないものもあるようですが、一般的なグランドピアノとアップライトピアノでは「88」固定で作られていることが9割以上のようです。
では、この「88」という数字何を根拠に決まっているかご存知でしょうか?
その内容をこの記事ではお届け致します!
誕生から200年で「54」→「88」に
ピアノは1700年代に誕生した楽器で、その歴史は300年以上にも及びます。原初のピアノを製作したのはバルトロメオ・クリストフォリ・ディ・フランチェスコという方で、現在と同じくハンマー仕掛けを用いたピアノがこの方によって生み出されました。
誕生時の鍵盤数は「54」と今よりも30以上少なかったそう。
ここから作曲家と楽器製作家がそれぞれの技量を高め合うことで、ピアノの鍵盤は徐々に増えて行きました。特にベートーヴェンの登場はピアノの進化に多大な影響を与えたとされ、彼の作曲の歴史がそのままピアノの歴史に直結していると言っても過言ではありません。
彼が活躍した1800年頃にはピアノの鍵盤数は「78」まで増え、100年足らずで20以上の鍵盤が増えたことになります。そして1840年頃には鍵盤の数は80を超え、現在と同じく「88」に到達するものが現れ始めます。
しばらく82~88の間をさまようピアノが主流になった後、1890年頃にはほぼ全てのピアノが「88」という数字に収まることになったのです。
200年ほどかけて鍵盤を34増やしたピアノは、その後130年ほどは数を変えることはありませんでした。
その理由は人間の耳にあったのです。
耳の可聴領域を超えてしまい無意味だから
その理由は、ピアノの音色で人間が聴き分けられる音階の領域(可聴領域)を超えてしまうからというシンプルなもの。
現在のピアノの88鍵は(A1〜c5)の範囲で固定されています。これよりも低い音は、我々の耳ではくぐもった重低音としてしか認識されなくなり、逆に高い音は酷い金切声のようなノイズ音にしか聞こえなくなってしまいます。
現代ではもちろん技術的に鍵盤数を増やしていくことは可能ですが、どれだけ増やしたところで音楽的に価値のある音を出すことはできないため、無駄を省くために「88」という数字を守って生産されているとのこと。
ピアノは実用性と生産性を両立させる最も優れた数字として、この「88」を意識しているということですね。
響きを考え「90」を超えるピアノもある
しかし「88」以上の鍵盤を持つピアノが皆無というわけではありません。
ベーゼンドルファーという会社が生み出した『インペリアル』という名前のピアノは鍵盤を「97」持つ種類であり、業界全体で見ても非常に珍しい(2010年までは世界で唯一の)コンサートグランドピアノでした。ベーゼンドルファーは他にも鍵盤が「92」あるピアノなども生産しているそうです。
これらのピアノに用意された追加の鍵盤は、演奏にはほぼ使われません。実際の商品では、誤って弾くことがないように鍵盤が黒く塗りつぶされてしまっています。
この鍵盤を用意することで変化するのは全体の音の響き。独特の共鳴により大きな重厚感を与えることができるようになり、独自性の高い音表現が可能になるなどのメリットがあります。反面、弾き方を熟知していないピアニストが演奏すると、他のピアノよりも耳障りな音を出してしまうリスクも抱えているようです。
しかしながらこのピアノが開発されたのももう100年以上前とのことで、決して最近のものではありません。ピアノの歴史は「88」が固定された時代を最後に、大きな革新的変化は未だ起こっていないのです。
まとめ
ピアノの鍵盤は「88」で固定。
その理由は耳の可聴領域の限界だから。
一部「90」を超えるピアノがある。
しかし100年以上大きな変化はなし。
でした。
鍵盤楽器の代表格として我々の生活にも馴染み深いピアノですが、その実根本的な仕組みは原始的な形を保持している楽器には違いありません。
現代技術を活かす形で、今後この「88」を超える可聴領域を表現できる楽器に成長するのか、それともこの「88」を完成形として違った発展を見せる楽器になって行くのか…庶民にも身近な存在であるからこそ、多方面な進化に期待して行きたいですね。
お読み頂きありがとうございました。