2018年9月にそれは起きた。
嫁が趣味のバレーボールで足を痛めて帰ってきたのだ。
病院での診断名は膝の「前十字靭帯の断裂」とその周辺の副次的なケガ。
スポーツ選手のケガのニュースでよく見るアレだ。すごいケガだということは分かるが、実態はよく分からない。ので実感も湧かない。
どうも着地に失敗してしまったとのこと。
バレーボールやスキーやバスケットボールの選手には珍しいことではないと聞き、日常生活でジャンプするのが恐くなりました。
僕は嫁がこのケガを経験する前、「靭帯断裂」について全く知識を持っていませんでした。そんな僕でもこのケガにまつわるスポーツ選手のニュースを見る度、ずっと気がかりだったことが1つあります。
それは「復帰にすごく時間がかかるんだな」というもの。
骨折などでも数ヶ月~半年で復帰が可能なことを考えると、復帰までの期間の長さは類を見ないケガであるとは思っておりました。だいたい1年以上が普通であり早くても10ヶ月、1年半かかっているパターンもよく見受けられます。
しかし実際にこのケガの当事者(のパートナー)となったことで、その事情を痛いほど実感することができたのです。
この記事では僕らの実体験を元に、「前十字靭帯断裂」及び生活にまつわる事情について、体験者としての解説を行って行こうと思います。
同じような疑問を持つ方、同じケガに苦しんでいる方のお力になれるものでしたら幸いに思います。
1.複数のケガが複合
嫁が断裂した靭帯は前十字靭帯という膝の大腿骨と脛骨を繋いでる靭帯ですが、スポーツによる損傷だと多くの場合で周辺部位の損傷が複合しています。
複数のケガが複合していると最適な治療法に違いがあり、それぞれのケガがそれぞれの治療法の邪魔をし合って、ケガの回復が遅くなることが起こります。
今回は実際に前十字靭帯の断裂を経験した、僕の嫁のケガを例に解説して行きましょう。
嫁が受傷したケガの種類
嫁の具体的な症状は
「前十字靭帯の断裂」
「外側側副靭帯の損傷」
「大腿骨の骨挫傷」
「半月板の損傷」
主にこの4つで、あらゆる面が複合したケガでした。どう着地したらここまで酷いものになるのかよく分からないが、とにかく物凄いケガだった。
スポーツによる前十字靭帯の断裂は、その他の部位の損傷も併発させてしまうことによる治療の難しさが大きな問題となります。
以下に1つずつ症状の詳細を記載して行きます。
前十字靭帯の断裂
メインとなる症状。
膝の前側、大腿骨と脛骨を結ぶのが「前十字靭帯」。
関節を安定させる支持機構としての役割を果たしています。
この靭帯が切れてしまうのが前十字靭帯の断裂です。スポーツや格闘技などで強制的に自分の意思とは違った方向に膝関節が曲げられてしまった際に断裂する恐れがあり、スポーツ選手だけでなく趣味で嗜む人にも少なくないケガなのだそうです。
しかしながら前十字靭帯は血の巡りが非常に悪い部位なため、自然治癒することがほぼありません。再建手術で代替物をあてがう以外では、ほとんど完治しないのです。完全な復帰には1年近い期間を要することが多く、スポーツ選手の選手生命を終わらせる大きな原因の1つとなることが多いケガです。
断裂しても痛みが引けば日常生活に支障がないレベルに歩行したり運動したりすることができるため、手術をしないで生活すると方法もあります。
しかし激しい運動には大きな支障が出る他、加齢による膝への負担が倍増してしまうリスクもあるため、基本的には再建手術をすることが望ましいです。
ちなみにこのケガ単体では大した痛みを感じないそうなのですが、大抵の場合その他の関連部位のケガが複合するため、総合的に激痛を覚えることがほとんどとのこと。
外側側副靭帯の損傷
つまり膝の外側の靭帯が損傷してしまった状態。こちらは断裂ではなく損傷なので自然治癒で全快できる状態でした。
膝には大まかに4つの靭帯があり、簡単に言うと前後ろと左右です。分かりやすいですね。
前十字靭帯が断裂したということは足を妙な方向に捻じってしまっているので、大なり小なり他の靭帯にもダメージが入ってしまうことが多いよう。タックルなどの外的な要因によるケガだと、前十字靭帯だけが切れることもあるようです。
嫁の場合は外側の靭帯を捻って傷めていたようです。
断裂よりはマシですが、この損傷だけでも自然回復には数ヶ月の時間を有するもので、簡単なケガではありません。
半月板の損傷
半月板とは、膝の大腿骨と脛骨の間にある板状のクッション材のようなもの。骨同士の繋ぎ目を調整する部位ですね。
ジャンプによる前十字靭帯の断裂の際には併発することが非常に多いケガとして認知されているようです。正にという感じ。こうゴリッとやるからでしょうゴリッと。
この部位が断裂するなど過剰に破損してしまうと骨の動きにかなり異常が出やすくなってしまうようですが、今回は保存による治癒が可能なレベルだったのが不幸中の幸い。他のケガと同じく安静に安静に…。
大腿骨の骨挫傷
上の骨の付け根からの骨挫傷も併発。
挫傷とは骨の内部が損傷している状態のこと。
骨の外側から見ると異常なしですが内側にヒビが生えたりして出血し、強い痛みを伴うケガ。痛みが割と長引くことが多く、長期間歩行の妨げになることも多い症状の1つ。
着地の時に圧迫されて打撲したことが原因で起きたケガだと思われます。これもジャンプによる前十字靭帯断裂の際にはよく複合するケガであるとのこと。
靭帯断裂や損傷の痛みは実は骨折ほどではないらしく、骨挫傷を併発している場合、事故後の痛みはこの挫傷によるウェイトも大きいのではないかという見解も。実際のところ何がどう痛んでいるかは全く分からないので、真相は闇の中ですが…。
このように、単に前十字靭帯の断裂と言っても、1種のケガのみが発生しているとは限らないのです。
ですが、こういったことが問題で発生する時間差はせいぜい1ヶ月というところ。靭帯損傷の治療が長引く大きな理由は別にあります。
2.治療中に発生する大きな矛盾
靭帯が断裂してしまうと完全回復には手術が必要です。膝の前十字靭帯の場合は切れた靭帯を縫合することが難しいため、全く新しい靭帯をあてがう再建手術が基本となります。
この再建手術を行うためには、まずケガの状態が完治しなければなりません。靭帯がない状態でのケガの快癒ということです。
前十字靭帯は無くても歩行が可能な靭帯ですので、補助具などを用いず1人で歩行ができるところまで行くと手術可能とみなされるようです。
ケガをしている状態で手術を並行するということは不可能となっており、まず2ヶ月~3ヶ月かけてケガの状態を落ち着かせる期間が必要です。
骨折などのケガだとこの期間でケガが完全回復し、その後リハビリを経て復帰となりますが、靭帯はここまで来てようやく本格的な治療がスタートできるというわけなのです。これを初めて知った時には驚かされましたね。
ちなみに手術を受けなくても日常生活が問題ないレベルには歩行ができる(ただし後遺症など残る可能性あり)ので、ケガの回復後にどうしてもこなせなければならない仕事や予定がある場合、自分の意思で手術のタイミングを決めることができます。「受けなくてもいい手術」ではあるものの、スポーツの復帰などにはもちろん必須です。
そしてここでも1つ、復帰の壁となる大きな問題が発生します。
上述したケガの複合によって、この術前の完治に至るまでの期間も大幅に長引いてしまうのです。
「断裂」は可能な範囲で早期にリハビリ
前十字靭帯は血の巡りが非常に悪いところにあり、断裂した場合に自然治癒する可能性はほぼないと言われています。
再建手術をして新しい靭帯をあてがわない限りは、残念ながら元の状態に戻ることはありません。
しかしながら前十字靭帯は「無くても生活できる」靭帯です。
ケガを快癒させるだけさせて、手術をしないまま日常生活を送っている方もたくさんおられます。
その場合、ふとしたことで膝崩れが起きやすいので激しい運動は非推奨ですし、その他の部位に負担がかかりすぎてしまうことで歳不相応に膝関節の動きが悪くなる可能性があるなど、デメリットはかなり大きいようです。
つまり前十字靭帯は、
「なくても歩行できる」
「切れたものは元に戻らない」
この2点の理由から、痛みが残っていても可能な範囲でどんどん歩行練習(リハビリ)を行うのが望ましいとされています。痛みが引いている=ケガが治ってきていることになるためです。
前十字靭帯のみを断裂しその他の部位が一切損傷していない場合は、2ヶ月程度で生活に復帰できるとされています。
実は前十字靭帯の断裂だけのことならば、骨折などに比べても早い状態で「靭帯がない状態でのベスト」を取り戻すことができるのです。
「損傷」は完治してからのリハビリ
一方で損傷している靭帯については自然回復が望めるため、保存療法が取られます。
損傷した靭帯はできるだけ動かさずに治癒を待つのが好ましいとされています。
無理に動かすと完治が遅くなるばかりでなく、同じ靭帯に伸び癖がつく(再度傷めやすくなる)などの問題が生じることがあります。
骨折などを含む「自然治癒するケガ」はその部分をできるだけ固定して元に戻るのを待つのが最も効果的な治療になります。仰々しく書いていますが、要するに「普通のケガ」です。
靭帯も損傷の程度によって、どの程度の期間動かさない方が良いのかがまちまちです。そしてこちらは一般的には痛みが無くなった段階からリハビリを開始するのが望ましいとされています。
「断裂」と「損傷」の治療法の矛盾
靭帯の「断裂」と「損傷」について書いて参りましたが、ここでこの2つを比べてみます。
ポイント
「断裂」は、早い内からどんどん動かした方が良い。
「損傷」は、痛みが無くなるまで動かさない方が良い。
並べて見ると分かりやすいと思いますが、この2つの治療法は完全に矛盾しています。
つまり「断裂」と「損傷」が同時期で同ヶ所に複合すると、互いの治療法が互いの治療法を阻害する状態に陥ってしまうのです。
しかも膝の損傷が広範囲に渡って複合すればするほど、正確に「膝のどこが痛いか」を判断することは難しくなります。その判断は本人にしかできませんし、本人は漫然と「膝が痛い」と感じることしかできない場合がほとんどと思われます。僕の嫁はそうでした。
こうなると、損傷した靭帯が痛んでいるので動かさない方が良いのか、損傷は治っているので動かした方が良いのかが全く分からなくなり、リハビリも迷走しがちです。本人が痛みに弱いタイプだと最早周りにはどうしようもありません。
結果的に目安2ヶ月程度で快癒するはずだった靭帯断裂の痛みが、3ヶ月経っても治まっていないことも大いにあり得ます。
うちの嫁は2ヶ月で治る(※ネット情報)はずなのに3ヶ月経っても万全ではないことを大層気に病んでおりましたが、原因はかなり高い確率でこれでしょう。僕自身、この「治りが遅い」ことについて嫁のメンタルケアにかなり労力を割かれたので、印象的な情報として頭に残っています。
仮に靭帯断裂(複合)を経験して、この記事を読んでいる方がいらっしゃいましたら、この事実を頭に留めて「時間がかかるのは仕方がない」くらいの気持ちでリハビリに臨んでくださると良いなと思っています。
3.手術後にまた歩行ができなくなる
手術前に歩行ができるまで回復するのですが、術後にはまた歩行ができない期間が訪れます。手術を行うと術後痛が大きく出ることや、靭帯の定着に時間がかかるからです。
これは1ヶ月程度で術前と同じレベルまで復帰できますが、本格的な歩行訓練を行えるのはこの期間の治療が終了した後となってしまいます。
スポーツ選手などにも靭帯が切れた状態のまま競技生活を続け、オフシーズンになってから手術を行う例が散見されますが、恐らくこういった事情を鑑みて判断されていると思われます。
嫁を見ている限り、せっかく歩けるようになったのにまた動けない時間に逆戻りするというのは、精神的にもかなり負担が大きいようです。あと痛むところが術前とは違うようで、同じようで微妙に生活の勝手が違います。
しかしながら、手術を終えれば「確実に元の生活に戻れる」安心感や折り返しを過ぎたことへの安堵感はあります。
ケガをしたばかりの頃よりは色々とポジティブに物が考えられる期間であり、患者の周りを囲む空気は明るくなりますね。
4.術後のリハビリに時間がかかる
術後のリハビリは術前よりも大変です。
術前のリハビリは、足を動かせない状態を長引かせない(手術可能時期を早める)ための措置というイメージでしたが、術後のリハビリはもっともっと重要な意味を持っています。
この期間をしっかり過ごせるかどうかで再建した靭帯が強固に定着するかが決まるそうです。リハビリをサボりすぎると再びその靭帯を痛めてしまう可能性が高くなってしまいます。
完治後のスポーツ活動に支障が出やすくなってしまうこともあり、より真剣に取り組まなければなりません。
また、だからと言ってやりすぎるのも逆に傷める原因になるとのこと。適切な期間に適切な処置を行うことが最も望ましいとされています。
時間をかけて新しい靭帯をじっくり定着させる必要があり、劇的に早く元に戻す治療法というのはないようです。
しかし知識が豊富な先生のリハビリを受けることでより確実に、可能な限り早い復帰を目指すことはできるようですね。一般人の場合、家の近くにそういった方のいる病院がないと通うのは難しいとは思いますが、選択肢には入りそうです。
問題なく歩き、膝の曲げ伸ばしが100%可能になるまでまだ数ヶ月ほどかかると思われます。スポーツへの復帰はそこから走行訓練や跳躍訓練も必要であると考えると、もう少し先の話です。
何より長いのは、このリハビリの期間。
完全復帰の目安はケガをしてから1年と言われているそうです。
僕の嫁も完全に問題なく歩行できるようになるまで、やはりケガをしてから1年以上かかりました。そこからしっかりと筋力回復トレーニングを積まないと、元通りに走ったりはできません。1年半以上経っても、まだ100%の動きが戻ってきているとは言い難いのです。
スポーツ選手だと、ここから現役の実力に復帰できるようになるまでの練習も時間をかけてする必要があるでしょう。
長い期間練習できない時間が続くこともあり、完全復活にはさらに時間がかかってしまうと思われます。特にバレーボールの着地などでケガをしていると、トラウマの克服など精神的な事情もありそうです。
以上のことから、靭帯断裂などの大ケガをした選手が完全復帰するのには、長い長い時間がかかってしまうのです。
5.【体験談】ケガが生活に与える影響
最後に前十字靭帯の断裂を経験した者の家族として、このケガをすることが生活にどう影響するのかを記しておこうと思います。
「膝が曲がらないこと」の弊害は、骨折などとはまた違う難しさがあります。大ケガをした場合の日常的な背景として、よろしければ参考にしてみてください。
イスに座るなど楽な姿勢が取れない
膝が曲がらないので基本的にイスに座れません。
イスを2つ使って1つを足置きにするなどしないと、ダイニングテーブルなどの高めな机を使った作業がかなり難しくなります。
だからと言って立っていることももちろん難しいので、ベッドに足を伸ばして座るなどが基本的な姿勢になりますね。
取れる体勢が限られる上に、介護側からはどこが痛むかを正確に判別できません。本人の楽な姿勢を探してあげるのにかなり苦労します。
大量のクッションを最も痛みが出にくい角度になるよう積み上げたりなど。終わりのない妙なパズルを組み立てている気分になりました。
この経験から人間が楽をする時に取る姿勢は、ほとんど膝の駆動を必要とするものばかりだと気付きました。
「楽な体勢を取れない」ことは、膝が動かないことによる最大の弊害だと言えるでしょう。
幸い、靱帯断裂の痛みは骨折などよりは長引かない傾向があるのと、痛みさえなければ動かすことや床に足を付けること自体に大きな問題はないため、徐々に対応できる範囲は拡がって行きます。それでも、具体的な改善が見られるまで1ヶ月〜2ヶ月のスパンは必要ですが…。
物理的に手助けすることができない
人生のパートナーがケガをしたわけですし、少しでも楽になるように助けてあげたいと思うものですが、相手の膝が曲がらないとこちらからは本当にできることがありませんでした。
他人がケガ人にしてあげられることの多くは、関節を起点に干渉するものばかりです。そのことにも初めて気付かされました。
何かをしてあげようと動こうとしても、絶対に膝に負担をかけてしまうので手を止めてしまう。結果として、外野は本人が辛そうに動いているのを見守ることしかできないのです。
足のケガというのは多かれ少なかれこういう事情を抱えているものだと思いますが、「膝が動かない」ことは最も"どうしようもできない"ものの1つではないかなと。これは相当に歯痒い思いでした。
当然ながら、本人が1人でできることはもっと狭まりまくっているので、身の回りのお世話は本当に物凄く大変です。
ちょっと高い段差を乗り越える時も、膝を曲げてはいけないので慎重に抱え込んだりと、サポートにも気を遣います。本当に1つ1つの体勢について、ああでもないこうでもないと試行錯誤する日々でした。
お風呂に入るには…
生活的なことを言うと、本人的に1番辛いのはお風呂に入れないことなんですよね。
これは最終的に風呂場で使うパイプ椅子を購入。
足をなるべく水平にできるような土台を用意して、膝に負担がかからないように配慮をしながらシャワーだけ浴びてもらってました。
アパートでは基本となる、風呂場と洗面所の間の段差を乗り越えるのもかなりの難敵でした。
その後は松葉杖で立った状態を維持しながらの服を着させる作業です。これも膝が曲がらないのでどうやって足を通そうかで非常に難儀します。
痛みに耐える嫁の裸体をタオルで拭き、真剣な面持ちで服を準備する毎日。端から見ればとんでもない光景です。想像しないでください。
しかしながら、こういった介護体験を子供が産まれた後や歳を取った後など、生活スタイルが激変する前に体験できていることはある意味で人生の肥やしになっていると思います。
僕はそうポジティブに捉えることで、なるべく嫁の身の回りの世話や家事を楽しむようにしていました。
いつもと違うことをやっている特別感は、考えようによっては楽しみに変わります。
不謹慎かもしれませんが、介護側はそれくらいの余裕はあっても良いかもしれません。終わりがあることですしね。
料理を覚えていて良かった
パートナーが動けなくなってしまった際に、大きな問題となるのがやはり家事です。
元々ある程度分担してやっていたので、できなくて困ることはほとんどありませんでした。前提として、夫婦そろって家事に触れておくというのは大事ですね。
この中で掃除については「僕ら夫婦は家が散らかっていてもさして気にならない」などの価値観が共通しているので、明らかに危険な水回り関連を除けば最低限で済ませました。
洗濯も2人暮らしなので2日~3日に一度回せば良いだけですし、乾燥機付きのものを投資だと思って買ったおかげで大した手間なく片付けることができました。こういう時に、良い物を買っておいて良かったなと思わされます。
しかし炊事については別です。
これだけは基本的に毎日やらなければなりません。
こちらについてですが、僕は嫁と結婚前に同棲を始めてから料理をすることを覚えていました。お互いに実家暮らしで料理をしない人間だったので、スタートラインが近しいなら一緒に覚えて行けば楽しいのではないかと思ったからです。
つたないながらも一通り準備ができるノウハウを持っていたのが幸いでした。嫁が足を壊して動けなくなっても、日々の食事の準備をすることは十分に可能だったのです。
何となく覚え始めた料理ですが、嫁がケガをしてからというもの、少しだけでもやれるようにしておいて本当に良かったと心から思いました。
結果的に全てで自炊を余儀なくされる生活になったため、嫁がケガをしてからというもの料理の手際も良くなり、作れるメニューのバリエーションも豊富になりました。今後の生活でも役に立つと思います。
正に「怪我の功名」というやつでしょうか。元々物作り畑の人間で料理は性に合っていたのもあり、楽しくできています。
この時に自分が独身時代と同じく全く料理ができない人間だったら、何もできなかったのではないかと思うとなかなかに恐怖です。
諸事情で両家の両親共に忙しい時期で過度な助けを乞い辛い状況だったのもあり、自分達で完結できる状態に身を置けたのは総合的なトラブルの火種の回避に繋がったとも思っています。
物理的な面では「ご飯の用意ができるかどうか」はかなり大きなポイントになると思われます。
「どうしよう」と言わなくて済んだメリット
料理ができて良かったと思ったのは物理的なことだけではなく、精神的な部分についても同様です。
まず間違いなく良かったのは、嫁がケガをした時に「今日からご飯どうしよう」と言わなくて済んだことです。
「まぁ飯は俺が準備すれば良いから」で最も大きい心配の1つを片付けられました。
こういった「どうしよう系」の言葉は、嫁側が体調を崩した時に旦那が言ってしまうNGワードにもよく挙げられるものだと記憶しています。分かってはいても、実際にその時が訪れてしまうとどうしても「今ある問題」を炙り出して解決したくなるのが男性という生き物なんですよね。仕事脳と言うか。
僕自身もそういうところはあるため、ナチュラルに「どうしようなぁ」と口に出して嫁を余計苦しめてしまっていたかもしれません。「私より飯の心配?」と思う人もいれば「私の不注意のせいで苦労かけてごめんなさい」と思う人もいるでしょうが、苦してしまうのは一緒です。
こういった発言を特に意識することなく回避できたのは大きいです。それどころか嫁の最も苦しい時期に颯爽とサポートができる旦那になることができたため、新婚1年目にして僕の株はウナギ登りです。やったぜ。
もし料理ができていなかったら精神面で嫁を圧迫していたかもしれないですし、互いに慣れない生活を強いられるストレスから喧嘩してしまう場面もあったかもしれません。
結果としてそういったものは皆無と言って良く、行き違いなく最も酷い時期の介護生活を終えることができました。
このケガがあったことで見詰め直せたこと、認識できたことも数多くあります。良いことばかりではないけれど、悪いことばかりでもありません。
この経験を糧にして、より良い結婚生活を送って行ければ、それが一番良いのだろう。今はそう思っています。
おわりに
前十字靭帯を断裂したスポーツ選手の復帰に、1年単位の時間がかかる理由を今一度まとめておきましょう。
ポイント
①その他のケガの複合
②ケガが回復してから手術
→断裂と損傷の複合によって遅延
③術後にまた歩けなくなる
④時間をかけたリハビリが必要
→怠ると再発のリスクが増す
実際に経験してみないと(僕は身近でサポートする側ですが)分からないこともたくさんありますね。非常に勉強になりました。
このような状態に陥って以降、スポーツ選手のケガで「靭帯」の2文字を見ると大きく反応するようになりましたし、これから選手に待ち受ける苦難にも想像が及ぶようになりました。稀にいる痛み止めを打って無理を承知で試合に出る人達が、いかに無理をされているかも分かるようになりました。
ケガそのものは決して良いことではありませんが、他人の痛みに心が動くようになるというのは人としてプラスであると僕は思います。そういったチャンスをくれた嫁には、純粋に感謝しています。
この体験談が